儚き偶像の彼方-Ⅲ-3 ― 2019年07月08日 17:48
それでも夕方少し青い空が覗いていましたね。
その3-2011年8月9日
あらら、皮一枚の白い姿に。
依然イシナギは好調、でも・・そんなイシナギ釣りにも複雑な事情がありそうだ。
まず、この釣りにおいて、釣った巨大イシナギの行方は、
(1)各自で持ち帰るか
(2)大き過ぎて対処できない場合は船長に引取ってもらうか
上記2択になる。
特に後者の場合、そのまま市場のセリに出すのですが、シーズン当初は浜値kg800円と高額取引されていたのが、もうkg200円を割っているとの事。「超」が付くほどの高級魚なのに、欲しがっている人が山ほどいるのに・・・・、それでも暴落しているのだ。
その理由は簡単、地域限定で爆発的に釣れ(漁でも獲れ)、その水揚げされるイシナギは全てヘビー級(30kg~100kg)、大波のように一気に押寄せたイシナギは、地元のバイヤーも捌き切れず、それぞれの受入先もパンクしているのであろう。
それでも滞りを避ける為、最終手段として値段を下げてでも流さなければならないのが本音だと思うが、魚の価値を下げるのは人間の勝手な都合にすぎない。
イシナギはまぎれもなく高級魚である、これもしっかり補足しておきたい。
イシナギについていろいろ調べるうちに、知れば知るほどこの魚に惚れてんでいく。
そんな日々の会話のなりゆきからであろう・・・
「で、八鳥さん、いる?」
とのお言葉、絶妙なタイミングで天からイシナギが舞い降りた感じがした。
彼自身、「ウチの家族もいっぱい堪能したし、あげる人にも全て渡した。価値のないものとして流通されるなら、欲がっている人(価値が分かる人)に渡ればイシナギも本望だろう、次に獲物が釣れたらの話だけどね」・・・・
そんな竿職人の言葉は、人に対しても、魚に対しても心意気を感じた。
そうなると、まずは弊社近くで磯料理屋(竹波)を営むマスターにプレゼントするのが本命の1本、
追加があれば私の分も・・・
「とにかく2本はノドから手が出るほど欲しい人がいますよ」
と伝えこれで【釣り手】、【受け手】、【運び手】の気持ちが一つになった瞬間だった。
・・・全ては成りゆきに任せ、でもすべき時が来たらビシッと・・、7月も終わりになろうとした時、遂にその日が来た。
朝6時に1本目、7時に2本目のコールが入った。
開始早々食ってきたとの事で、まさに船上からの生電話であった。
私もルンルン気分で勝浦へ車を走らす・・・。
勝浦に到着すると、氷でキンキンに冷えた2本のイシナギがそこにあった(30kgと35kg)。
「別にアベレージサイズだよ」といたってクールな態度、奥さんや子供も、横たわったイシナギには見向きもせず横をタッタッタッ・・・と通り過ぎる。
何ちゅう家庭や、きっとこの家庭では日常茶飯事で巨魚は見慣れているのでしょう・・・。
その場の雰因気に未練を残しながら、早々に2本のイシナギに車に積込み、立会人の釣主(彼)と共に帰路鎌倉へ。
到着すると竹波マスターが外で待っていてくれた。
イシナギを見つめる嬉しそうなマスターの顔。
店主の明るい表情に、勝浦から輸送して来た甲斐もあった。
かなり疲れた表情の筆者だが、為に生きられた気がした。
我々はそれで十分だった。
数日後、メニュー板を見ると、定食・刺身・鉢物・煮魚・塩焼き・・・・。
そのTOPをイシナギで飾り、地元や観光客の胃袋を満たした事は言うまでもない。
よかった、よかった、まずはミッション終了。