楽園の終焉Ⅲ-6 ― 2021年04月20日 15:43
1982年当時のオリジナルカップ
現行モデルには記載されていない
そのような2013年の夏を独りかまたは、末っ子と二人で時々遊んでみた。たまに60cmをはるかに超えるサイズのヤツは、堂々とした風格を備えていた。
アブマチックで遊ぶが、65㎝前後のナマズ
これ以上のサイズは、なかなか釣れなかったがそれでも何本かはこれを超えていた
浪人鯵症候群の刺激がシナプスを伝わりそして直ぐに終息する。
一刀両断の勢い。
そしてまた、現実な夏の夜。
蒸し暑く、辛く、余裕と言う言葉すら失う夏であった。
怪魚の夏は過ぎ去り、闇夜の小さな怪物釣り・・というのが適切なのでしょうかね。昨今は。ただの野生の魚なのですがね。わずか60cm程度の小さな魚類にもその息遣いは、心が痺れるような生を時々ではあるが見せてはくれた。
振り回されて候。
"釣りとはなんなのでしょうね。"
ひとりごと。
その独りごとの後ろで、子供がLEDライトの光を当てて何やら観察している。それは、無数の水中のエビ、稚魚達だった。それらを彼が観察し始めたら本日は、終了となるサインである。
‟夏の遊びも、夏休みも終わりだな“
小学生最後の夏休みとなった末っ子も何匹が釣ると終盤には、すっかり飽きてしまった。
そんな、とある終盤戦の日の出来事だったが、バスを狙いたいとの彼のリクエストでそこに行ってみた。ワームに小さなコバスが反応するのみで日が暮れてしまった。それならばどするかと彼がいつものバスタックル5'6''fに6Lbナイロンラインそして、リーダーも取ることなく、いつものあのポコポコルアーを付けてみた。ちょっと細めのナイロンだけれども獲れるだろう。おそらく。
そのロッドは、故人で同郷の先輩から頂いたグラスの2pcsブランクだった。彼が小学2年生の頃から使っているもの。しかしそのブランクは、30年以上も前のものであるらしい。私がK先生から頂いたものだった。
数投目、白波の間に僅かに飛沫らしきもの。
"魚だ!"
その道具に掛かった奴は少し大きめらしかった。
その竿が元から曲がっていて、糸が吐き出されて行く。
こいつは、どうも 歯が立たないみたいだ。
彼が、もたもたするうちに根に入られてしまった。
珍しいな。
それならと息子から竿を取ると、強引に引っ張った後少し緩めてみた。奴は、動きだした。時々首を振って抵抗している様子。
首を振る度毎に、竿元がおじぎしては、リールからチッチ、と音が出る。
「おぉ!・・寄ってきた。」
そのラインの限界と思わしきテンションで、何度かショートポンプで間合いを詰めてやると・・・・。
「ああ僕に貸してよ!」と堪りかねた子供からのクレーム。
それを息子に渡してやった。彼が掛けた魚なので当然と言えば当然なのだが。
「もっとゆっくりと竿を起こして、ショートポンプで寄せて。」
「そうそう、今度は寝かせて寄せろ。」
リールスプールが逆転して糸が出て行った。
「おお!ドラグでてるな。」
それでも魚は少しずつ寄って来た。
「おおっ!これは60をこえてるなぁ。」
細いラインゆえ、強引にずりあげるとラインが切れそうである。
それならばと、ランディングを買って出る。そいつは、軽く60cmは超えていた。62~65cmと言ったところ。直結なので無理は効かなく、ルアーを何度か掴んで魚の胴を掴もうとした時、クネクネとその身をくねらせて手を振り払おうとする。
そして・・・次の瞬間、 あっさりと切れてしまった。
奴が首を振った時にグローブに針がひっかかり魚は外れてラインも外れたが、糸の切れたルアーがグローブに引っかかっていた。
「・・・・・。」
ランディング失敗。
お恥ずかしい。
なんともお恥ずかしい夜であった。
「さあ、帰ろうか。」
「うん。」
それだけであった。
彼からのクレームはない。
その以降、秋までに目標の70㎝には少し届かなかったが、なかなか目標を掲げると案外それに向かっては進んでいるが結果が即出るとは限らないのである。そのような小さな遊びの目標でさえ、到達する事は容易では無いのに、人生の目標となると正に掴みどころの無い雲の上にあるのかも知れないと思っても見た。秋が終わろうとしていた。
半袖の時期もとっくに終わろうとしていた。そのような怪魚ハンターもどきな親子の夜が過ぎ去って行った。普通の硬骨魚類なのに、怪の文字が今流行らしいけれど・・・。
地方の河川には、まだまだ70cmを超えるものが釣れるらしいと後で聞いたが、ここでは少し難しい感じがしたのであった。
その7(都会の中のあんみつ)へつづく


