わだつみのかけら-4 ― 2018年08月24日 16:52
起死回生
同じチャンスは二度とない
決してひっそりではない佇まいではあったが、この日は我々以外のお客さんは殆ど居なかった。とてもさみしかった。
それからまた1時間ほど経ったころ、だんだん慣れてきたラインの手繰り寄せを行っているとまたしてもラインに“コツッ!”とアタリがあると同時にメジカの泳ぐ力では無いちょっと強いテンションが掛かり、とっさに「来た!」と言ってラインを離すとスルスルスルーと手繰り寄せていた20mくらいのラインが出ていき、それが無くなるとスプールから引き出されていくのだが、バックラッシュをしないようにかつラインによけいなテンションをかけないようにと、10、20、30mと送りこんでやった。
初めの時には30m送りこんでも不十分だったので、こんどは失敗しないように呑み込ますつもりでさらにラインを送りこみ計70mくらいでクラッチを入れてロッドを大きくあおった。
と、同時にロッドが大きくしなり、魚のノリを確かめて「掛かりました!」と言って慎重に素早くリールを巻き上げ出した。魚も突然わけのわからないところから引っ張られることに我を忘れているのか、10、20、30mと重みはあるが抵抗無く寄ってくる。
「あまり大きくは無いかも?」と余裕をかましていると、魚も我にかえったのかいきなり走り出した。それからはロッドとドラグで耐えては少し巻き上げ、また走られての一進一退を繰り返しながら徐々に徐々に引き寄せてフックアップから20分がかりでようやく20kg弱のキハダを取り込むことができた。
キハダを〆ている中野キャプテン
わだつみのほほえみ
一時は“完全ボウズ”も覚悟し“早上がり”も考えていたのが20kgクラスを1尾釣りあげたことで皆テンションが高くなり真剣に仕掛けを流していた。が、それもしばらくアタリがこないとともにテンションは下がり、ただ黙々と仕掛けの手繰り寄せ&リリースを繰り返すようになっていた。
「腹減ったなぁ~・・いま何時くらいだろうか?そう言えばまだパンが残っていたな。それを食べようかなぁ、でも仕掛けをあげたらせっかくのメジカが死ぬからもったいないなぁ、この餌が死ぬまで釣ってそれからパンを食おう・・」と思いながら、いつもなら横へ走るメジカが下へ下へと突っ込んでいくのを不思議に思いつつも仕掛けを流し、ある程度ラインが出るとお決まりのように手繰り寄せようとすると、“ツンツン”とラインを小突くような反応が。
その頃、すっかり戦意喪失の職人は、コックピットからCapと下らない会話をしていた。
異変にはまだ気が付いていなかったのである。


