楽園の終焉-小楽園の幸福2011-7 ― 2020年07月30日 20:48
それではその7になります。
私が良く受ける質問の中では、"ボートからなら誰でも魚獲れるでしょう?"という人が案外と多い。がしかしそれはおそらく、ボートからのゲームをあまりしていないか、操船フォロー無でも獲れる魚しか狙った事のない釣り人の発言である事が多いかと思ったりする。さらに釣りをした事がない人にとっては、竿折れないの?といつも聞かれるのでこれまた、最初の"いろは"からの説明になるのでもっと話は長くなってしまう。その際は、かなり省略して説明をしたりする。
その理由は、結構マイナースポーツなのでこれも仕方が無いことと理解している。彼らの中には元々そう関心が無いので、返って長い説明は、迷惑な話になってゆくのが辛いところである。それは、その相手が何を期待して質問してくるのかにもよるだろうが。
今度は、ロッドとラインの角度が120~100度つまり鈍角に、徐々に縮まりつつあった。
「ストップ!」
キャプテンは空かさずボートのスロットルを戻した。
途端・・・。
エンジンが止まった。
"えっ?エンジンまで止めたの?"
確かにストップと言ったのが悪かったのかもしれない。
"ニュートラル!"と指示した方が良かった。
エンジンまで止めては魚の走りが変わった時点での対処が出来ない。
「エンジンは入れておいて!!」
キャプテンは理解してくれた。
"息があっているなんていったものの"なかなか微妙なラインであった。もしかすると燃料の具合も気になっていたのかもしれない。
魚はもう横になって旋回し始めている頃であろうが、気は抜けないところである。魚は左に行ったり右に行ったりして、廻っているのでロッドも右に左に代わる。たが、舳先の小さな船故に交すのは容易であった。右舷も左舷も竿をひょいと交して態勢を変えるだけである。
案の定、魚が艫側に移動しつつあったが、このボートの後方は屋根が付いていて、本来遊覧用なので移動するのはその屋根までと、アングラーが動くのは制限がある。直ぐに旋回をキャプテンに要請する。
そこは、小舟の小回りの良さ。
直ぐにボートは、右旋回する。
ラインを中心にぐるりと回る感じのイメージである。
魚は、下に位置しながら少しずつ方向を変えて行く。
少しずつリフトを試みるが、最後の抵抗なのか、浮かそうとすると竿を伸し行く。ズンズンと尾鰭を叩いて抵抗する様子が伝わってくる。相手はやはりパワフルなのには変わりなかった。そこからさらに1~2分が経過した。
すると、その動きにも限界が来たのか糸を出すまでのパワーはあまり残っていない感じに変わってきたのである。しかしながら、ロッドはまだ限界値まで曲がり切ったままでいた。
ロッドを起こそうとするとガッガッと下に伸しにかかる。生命感が大きく伝わる。
それから7~8分が過ぎた頃、魚が見えてきた。
一気にリフトを試みるがロッドは弧を描いたままで、リカバリー(起きて)してくれない。だた、魚が横になってかろうじて尾鰭を叩いているだけであろう筈なのに。この有り様は、やはり20Lbクラスロッドなのだろう。かなり無理はしているという事である。となればここは、往年のフットポンピング(屈伸で魚を浮かす)しかない。
ラインスラッグを出さぬように膝を曲げてゆっくりと竿にあわせながら立つ、また膝を折り曲げるの繰り返しの屈伸運動をする。膝を曲げてしゃがむ時に同じスピードで糸を回収してまた起き上る分だけ上に浮かせる。
この繰り返し。
魚は、見えてからが早かった。
「浮いた!」
ぐらりとヤツが白い腹を見せて横になった。
「ランディングするからグローブをして!」
そう名人に伝えたが・・・。
なんと撮影中だった。(お願いしていたので当たり前)
あとは、操船中のキャプテンかユリアナ氏になる。”ユリアナ氏に任せるのはかなり無理があるか・・“
瞬時に、これは諦めて自分でランディングすることにした。
弱ったところを確認しながら、ロッドを引き込み、リーダーを掴み、魚を廻す。
一回目、上手く掴めず。
もう一度廻す。
2回目。
テイルを掴む。
ゼイゴがグローブ越しにはっきりと当たる。
尾柄部を両手で掴む。
船に引き入れる。
歓声が上がる。
上がった直後のロウニンアジ
この時点では、まだ体色は、そう黒くない。
キャプテンのそれまでの暗い顔からおもいっきりその黒く焼けた顔から白い歯を出して円満の笑顔をみせた。
そしてまた、ヒーヒーと声を上げた。
初めて見るユリアナ氏は、驚愕していた。
それまでは、寝ていたのに。
あまりにも突然の未体験ゾーンに一番驚いていたのはこのユリアナ氏だった。
キャプテンがまたヒッヒーと声を上げる。
がっぷりとキャプテンと握手。
ロウニンアジは、ロウニンアジ。
これをGTと呼んだのは、鈴木師匠であることは案外知られていないのは一体どうしたことであろうか。
「Thank you captain!! 」
「アリガト! アリガト!!」
何故かキャプテンは日本語で答えてくれた。
それは20kg前後のGTと呼べるサイズだった。
しかも、体色は黒。
ブラックウルアだ。
気持ちは一気に晴れて、小楽園。
4人揃って笑顔が初めてでた。
初めて4人が同じ気持ちになり得た時間。
束の間の小楽園。小さなちいさな楽園。それでも瞬間に見える刹那な幸福だった。そんなことがこの世知辛い世の中と人生で何度あるだろう。
見下ろすと、ルアーが下顎にしっかり、ガッツリと掛かっていた。
ルアー腹側の200Lbスプリットリングが、S字に見事に変形していた。
魚の首振りの捩じる力は案外強いものである。針はがっちりと掛かって変形は無かった。(ST66-2/0)
「キャプテンリリースする?」
と日本語で声をかけた。
「OK!OK!」
と2連続で了解を得たのでリリースする事にした。
キャプテンがどうしても欲しいと言う事ならば、差し上げる気持ちはあったがその返事で決まった。
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