楽園の終焉-小楽園の幸福2011‐5 ― 2020年07月09日 20:32
-ジュクン-
なんとも不思議でライトな釣り風景だが、狙う人は本気らしい。
その胸鰭はまさしくロウニンの刀・・・果たしてその切れ味は。
バリにはジュクンという伝統的は小舟がある。元々は現地の漁師が使っていたもので、当然今でもそれで漁をしている人もいると思うが現在は観光用として多く使われていると聞く。
そのジュクンで釣りをしてみよう。
ライトタックルで。
と言う事なのだが…。
人のいい感じの船長は、元漁師で今はこの小舟で観光客を乗せている。
年齢は私と同じくらいらしい。
話によると、漁師よりも観光でボートを出す方がまだいいと言う事だった。
彼にもさまざまな、事情と決断があったであろう。
そのジュクンの流れ的には、船の大きさや安定性、踏ん張りの利き具合を考慮しながらここは、ライトロッドであろうと判断しての本日の釣りとなった。
狙いはGT、浪人鯵、ロウニンアジである。
日陰付の観光風船。
座り心地は悪いが贅沢は言えない。
船は、ゆっくりと回転した後ギリギリのところまで砂浜に近づいてステップを下ろすと、乗客はぞろぞろと降りて海に入った。丁度膝上くらいの深さになった。我々3人も海中へ足を入れて丘へ向かったが、既にその近くで小舟が待っていた。
ジュクン?と聞いていたがどうも作りは少し大き目。それは、FRP製でイスが何列か作ってあった。YAMAHAかSUZUKIか忘れてしまったが船外機1機がけ25馬力だった。
これも果たしてジュクンと呼んで良いのか判らか無かったが目的は観光の為に作られたものであって漁には使っていないようだった。
船長と立派な愛棒。
予備船外機が備え付けてあるが、予備タンクはなく、脆弱だった。
近くを簡単に周遊するためのボートらしい。
バリ語で釣りはマンチングといい、GTはカトッゥンというらしい。
船頭さんに握手してから乗り込み、早速沖に出た。
船頭さんは、私よりもかなり年上かとも思ったが案外同い年くらいかもしれない。
2時間―丘で休憩―2時間のスケジュールでチャーターしているとの説明をH氏から受けていたのだが、いつもと違って小ぶりで燃料タンクも小さいのでそう一日中という訳には行きそうもない。
幾分勝手も違うし、規模も違う、移動範囲も当然違うが、ジュクン風で海面スレスレ感もある。
それは、それで移動も楽しい。
辺りは、ジュクンやダイビングの船があちらことらと点在していて、これは案外釣り辛い場所も多いようである。そして何よりも投げるルアーの前を平気で横切ってゆく。(ほんとこれは、頂けないがそれも仕方がないと諦める)
最初サラシ際を打とうと接近するも、複雑な海流と波とで上手く近づけ無かった。小舟では、準危険レベルである。
と我々は、少し遠慮気味の位置からスタートした。
舳先に私と名人の2人が立って複雑に絡んだ流れにキャストする。疑似餌が表層を叩く(泳ぐ)。これまた確信すら持てないが、目ぼしいところには必ず二人で叩いてみる。魚群探知機もなく、当然レーダーもない。
水深も判らない。
「ユリアナさん、船長は漁師さんだったのかな?」
少し気になったので余興にユリアナ氏を通して船頭さんに聞いてみた。
少しの会話の後、
「昔は漁師もやっていたしトローリングもやっていたそうです。」
なるほど、その話に嘘偽りはなさそうだ。
「カトゥン狙いだからと伝えてください。」
漁師は頷いただけであった。それだけで、船頭さんは十分でだと言わんばかりだったように感じた。
諦めないで投げましょう。
と言い聞かせながらキャストする。
その後、めぼしきところは取りあえず投げて探った。何度も何度も同じことにみえるがその都度、少しずつ違う。
流れの複雑さはうず潮となって船をクルクルと回転させた。このクルクルがとても釣り辛い。
2時間が過ぎた頃、諦めムードが漂う。
ユリアナ氏は、このまったりとたるい雰囲気に、すっかりお休みのようだった。
毎日寝不足なのかな。24時間体制にちかいものね。そこは、まさに目をつぶってもバチはあたらないだろう。
しつこく、アクションを繰り返す。
ヒットするのか全く分からず。
船頭さんの顔もいつまでこんな事をするのかとも思える表情に、あとはこちらが折れるだけという雰囲気になった。少しの不安感もあるだろうか。
気を持ち直して、竿を置き、疑似餌をダートベイト90から、折角ならと他の量産日本製18cmに替えた。GTルアーとしては、小ぶりな方に入る万能型ペンシル。ロッドとのバランスも良く、水絡みも良い。
疑似餌は、ロッドをスライドジャーク(横にゆっくりと煽る)すると頭を下げて左右に首を振った後、ぴょこんと頭を出す。
ボディの1/3くらいを水面から出しまた浮きが消し込むように前後する。
このタイミングがなんとも面白いが、魚が捕食する時はこのタイミングのような気がする。
601-FTS20 20Lb class
MOONRODでもライトクラスで最も信頼の厚い機種である。
しかし、喰わない。
何処にいるのか判らない。
いても喰わないのか。
ダイバー達は、悠々と泳ぐロウニンアジをこの下で観察しているのか?
判らない。
悔しいけれど…。
奴は、出て来ない。
シナリオ通りには、いつも行っていない。
ドラマにならない。
これが現実。
いつも理想は高く、現実は厳しい。
その厳しい現実にプレッシャーとストレスが乗っかっている。
頼みます、解放してください・・・。
腐敗した心の底に落ちて行ってしまいそうで。
「ふぅー。」
ため息風。
「ポイントを変えますよ。」
とユリアナさんが言う。
もちろんそれはキャプテンの意見ですけど。
その言葉に異議も最早無い。
ただペットボトルの水と燃料だけが消費された。
今日は、スプライト、コーラ飲み放題ではない。
既に500㎜ボトル3本目。その水は、みるみる汗に変わるのだった。
ビーチに近づくとこれまた、ダイバー船と他のマリンスポーツでどうも釣りづらい。(溜息交じり・・・)
そこで小島回りを叩く事にしたが、船長は、燃料があまり無いと言った。
時計を見ると既に2時間はオーバーしていた。
もう少し行けそうらしいので、いつものポイントの近くを流す事にした。
「もっと島に近づいて。」
名人が言う。










