楽園の終焉Ⅲ-16 ― 2021年06月25日 17:40
本日初の舳先への移動となる。何ともかんとも2年ぶりのこの船の先端だが、一気に見渡す限りのワイドビューなスクリーン感に変わった。
何とも言えないこの視野の広さは爽快風である。
″さてと、お手柔らかにお願い致します、鯵さん”
海面は、奴の匂いがする気がしてならない。
やる気満々風の彼らの匂いが、脳内空間全てを満たす。
中年オヤジには、ちょっとばかり辛いフルキャストで挑むことにする。その竿先(762-TCDH-KVG)には、‟あいつ“が付いている。
そう、新型兵器のクラフトベイト、リアルベイト130gオイカワカラーである。
クラフトベイト オイカワ MOON SP
筆者が絶大なる信頼している名品のひとつ
オイカワは、淡水魚で関東ではヤマベとも言われる
もちろん、バリには居ない
はい、そのオイカワですがなにか?
ええ、勿論淡水魚です。
清流のヤマベです。
それが、南海のこの激流で泳いではいけませんか?
泳げますけど・・なにか?
この疑似餌と言う名の木製のオイカワは(リアルベイトオイカワ)・・・・きっちりと泳がせて頂きます。
潮の利き方は上々、いや激強と言わざるを得ない。とても勢い良く流れている様子。その流芯では、ルアーがあっと言う間に流れてしまう模様。先ほどから専務は、流れの流芯を超えてキャストしてから一番良いコースをポッピングさせている様子である。
狙いは、全く外していない。
″うーむ、また出してしまうかも”
オイカワ君をその流芯越えのつもりで、キャストしてみる。
この複雑で速い流れの中でも、しっかりとオイカワ君は、水を絡めて泳いでいる。あのたまらない、ふらつき(よたつき)感と水中に光を反射してフラッシング効果も絶大だろう。
そして、良くまた水に絡む。
″うーん、出ない”
ヒットエリアを過ぎたところで、早々にリールを巻き上げ回収する。
次は、流芯の手前側を流す為にダウンストリーム気味にキャストする。ラインの放出音のあと着水。
リールのベイルを素早く戻して、ラインスラッグ(糸のたるみ)を即巻き取り、ロッドティップを手前に動かせ、オイカワ君をダイブさせる。グリグリィ・・・
と浅く潜りながらボディを回転させながらそのボディを左右に振りながらヒラ打ちする。相変わらず期待を裏切らないその動きである。
そして・・・・・。
電光石火!
水柱!
いつもの期待を裏切らない豪快なバイトだった。
一瞬姿が見えたか見えないかのタイミングで即反転!
と同時にヤツの鰭が水を押し上げて、空中に尾鰭を向けるあの瞬間が目前で訪れる。
飛沫そして、また飛沫!
手に持つ安心の愛竿76TCDHに力が掛かると、一気に撓る。腰を溜めて一回、二回、とまた追い合わせを入れる。ロッドは、大きく弧を描いて曲がり切ると今度は、‟これはたまらん!“とばかりに、リールから最新鋭高分子ポリエチレンライン(糸)が吐き出される。リールは、最近S-社を多く使う機会が増えていたが、この逆転装置(ドラグ)はすこぶる良く動く。しかしながら、どうもその残念な逆転音やそのボディデザインは気に入らない。あの金属音が全くないのは何故か寂しく感じるのであった。そこは、往年のPENN病なのかもしれない。どの分野に於いても選択肢の無いと言う事は、この事であろうか。大きく分けて2社択一なのは、とても残念ではある。しかし、その実力はあっても消えて行ったもう2社のリールは、もう使う事も目にする事も出来ないだろう。既にロウニアジ釣りという分野が隆盛を極めつつある頃から、その選択枝から消えつつあったのだから。
ああ大森製作所が頑張っていれば、ダイヤモンドGTシリーズなんてあったらとても素敵だったと思うがそれは妄想でしかなかった。
それはもう、ただの空想でしかない。
オリムピックリールで、あのトビウオ風に五輪マークでも、今日の釣りはリョービでも良かった・・・のだが、それもまた過去の遺物である。(最後のサファリ5000の次が出ると当時の関係者には変な夢は持たされたのだが)もし生き残っていたら、隅っこにでも日の丸を付けてほしい。それもこれも、もう過去への空想でしかない現実。そして多くの若者は、それを知らないで生まれてこのロウニンアジ釣りに参戦するのだった。時代の流れは刻々と変化してしまうのだ。それに生き残ったとしても、時代の流れには逆らえない。もちろん人間の生涯も。
鯵の最初のダッシュは、勢いが少しばかり良かった。暫く糸を引き出した後、一旦止まり、また糸を引き出していった。数度の攻防が続くと、魚が一旦止まってから反撃に移るとする。
ゆっくりと船は流れを下っていった。
そこからガンガンと巻きにかかる。今までの出された分をせっせと巻きとる。
「それは、あまり大きく無いです。」
Capt.は、淡々とそう言い放ったのであった。
そうかもね。でも少しでも大きい方がいいなあ。
手前ボート下まで糸が入って行くと、再びヤツが竿を伸しにかかった。いつもの浪人鯵のパターンである。
手元にグッ、グッと鰭と首を振る感触が伝わる生命感。命と命が繋がるような気になった。いやなってもいいのではないか。
そいつは、だいたい5分くらいで浮いて来た。まあまあのレギュラーサイズであった。
″よう、お久しぶり鯵君”
そいつは、オイカワ君をおもいきり齧って傷だらけにした後、日本製匠トレブル5/0フックが刺さっていた。
※カットしました。
特段大型でもないロウニンアジだが、1日目のウォーミングアップにしては、刺激は強
い
間一髪テイルフックにギリギリで顎に掛かっていた
危ないところであったけれど
少しの撮影後彼には、早々に御帰り頂いた。そいつを優しく水に入れると、勢いよくその蒼の中へ消えていった。感無量である。
「さあ、次は皆さんですよ!」
「次をやっつけてください!」
勿論ですね。将軍様&専務は、その一本目を見てかどうか俄然やる気になった様な気がした。いや気がしたという表現は、かなり弱い。
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